君たちは、古い武器を捨てて行く 【JUMPツアー2016 DEAR.】

※一部、曲名や衣装などツアーのネタバレを含んでいます。

 

 

 

 

僕の頭の中を見せてあげる。

舞台の上からそう、山田君に語りかけられている、ということに思い至ったのは、コンサートの終盤「SUPERMAN」に差し掛かった時だった。

アルバムの中でもダンサブルな一曲。絶対ガッシガシに踊るだろうと思っていた私の予想を裏切って、JUMPは煌びやかな電飾の施されたシャンデリアの中にいた。

ギラギラ光るメタリックな衣装に身を包み、不敵な挑戦者の顔を見せる九人を見て、思った。

 

僕の頭の中を見せてあげる。

ねえ、こんな顔も出来るようになったんだよ。

僕たちはもう、子供じゃない。

 

はっとした。気づくのが遅すぎたと思った。何のためにパンフレットを読んだのだろう。

きっと、最初から、そう語りかけられていたに違いなかった。

 

ここはみんなで遊びましょう。

招待状のペンライトは持ってきた?

こういう爽やかできゃっきゃしてわいわいしてる僕たちが好きでしょう?

 

ねえ、君たちが望むものを見せてあげる。

 

それまでの優雅でポップな空気を一変させ、狼煙をあげるような「SUPERMAN」が終わると、ぐっと一段と大人っぽい振り付けの「Tasty U」

艶っぽくしなやかに、でも端々に男性の力強さも感じさせる、一糸乱れぬダンス。色っぽく腰を振れば、客席は悲鳴のような歓声に揺れていた。

 

ほら、これが欲しいんでしょう?

 

見透かされている、とすら思った。

現実離れした美しい容姿。それに相応しいアイドルらしい健全な爽やかさ。これまでのJUMPのイメージ。それら全部を突き崩すように、炎をまといながら、彼らは夜の顔をしてみせた。そこに需要があることを、彼らはちゃんと知っている。

そして、主旋律がバイオリンでアレンジされた、クラシカルな「Ride With Me」

 

僕たちは、古い武器を捨てて行く。

 

そう言われていると思った。挑戦的だった。なにもかもが。

新しい振り付け。新しいフォーメーション。これまで培ったダンスという武器。「Ride With Me」はその象徴だと私は思っていて、これまでもコンサートの要所を担ってきたダンス曲だ。JUMPは踊るイメージがやっぱり強いけど、とくに振り数が多く、フォーメーションがくるくる変わる「Ride With Me」は、JUMPのというか、ジャニーズのダンス曲の中でもかなり高難度の曲だと思う。曲だけのアレンジで既存の振りのままという選択肢もあったはずだ。

でも、彼らはそうしなかった。今手の中にある、体に馴染んだ、使いやすい武器を捨て、新しい武器を手に、僕たちは先へ行く。そう言われている気がした。涙が出た。馬鹿みたいに出た。それは過去を捨てて行く、ということではなくて、過去と経験の上に手にした力で、さらに新しい扉を押し開いていくような、次のフェーズへ進化していくアイドルの戦い方だった。

そんなにまで、君たちを強くさせるものは何?どうしてそこまでするの?してくれるの?個々人の仕事が充実すればするほど、きっと全員で息を合わせることの難易度は上がっていく。それは想像に難くない。でもそんなことは関係ない。わかってる。わかってるよ、でも、理解に気持ちが追いつかないよ。何てものを見せられているんだろうって。震えて泣くしかなかった。DEAR。親愛なる君へ。眩いステージの向こうから、その踊りにのせて、惜しげもなく注がれる言葉がある。

 

「ファンのみんなが、僕たちをここまで育ててくれたんです」

 

僕たちはまだまだ先へ行く。もっともっと輝いてみせる。もっともっと高いところへ行くんだよ。だから「今すぐにRide With Me」

 

本当に初めて、その歌詞の部分で泣いた。

正直に言って、10周年という節目を前に、こんなに挑戦的なコンサートを作ってくるなんて思いもしなかった。10周年のその先にあってもおかしくないような、新しいJUMPを見せる、そんな強い意志がコンサートを引っ張り続けていた。

 

結成から9年が経って、最年少のメンバーが22歳になった今、大人っぽさや色気のあるパフォーマンスを全員が出来るようになっていると思うから、今回のテーマの中でそういう部分を打ち出してみたいなとは思っています。

 

きっと見てもらえれば「DEAR.」というタイトルに込めた僕らの思いが分かってもらえる、ファンのみんなのためのライブになると思うので、ぜひキュンキュンしてほしいなと思っています!

 

山田君がパンフレットに寄せてくれた、この言葉が全てで本当だった。何一つ、誇張も嘘偽りもなかった。ちょっとの背伸びも、それすら、等身大であると思えるような、今のJUMPの全てが詰まっていた。

ああ、間違いなく愛されていたなあと、今日の全部を反芻しながら、静かにそこに思い至るような、そんなコンサートだった。