ジャニオタ、BTSにハマる

この世で一番、美しい光を見た。

その瞬間はいつだって、日常の顔をして、目の前に現れる。

刹那の間に、闇を駆け抜けていく流星のよう。

 

嗚呼、命が削れ、力強く弾けて煌めく、その音がする。

 

 

 

 

 

その瞬間は、予期せず訪れてしまった。

9/12の「THE MUSIC DAY

この日はついに、Sexy Zoneに聡ちゃんが戻ってきてパフォーマンスする、その記念すべきお祭りの日だったため、わたしも早々にテレビの前でスタンバイしていた。

で、そのSexy Zoneの前にパフォーマンスしたのが、あのBTSだったわけだ。名前だけはすごい知ってる。世界でめっちゃ売れてるすごい韓国のアイドルでしょ? まあでも、わたしはそんなに興味ないし、K-POPはそもそも沼が深そうで怖いから近寄りたくないなー、と思っていた。本当に、ガチで、切実に、そう思ってたのに。

 

曲が流れだしてすぐ、めちゃくちゃ引き込まれてしまった。ポップなセットも可愛いし、曲もキャッチ―で耳に残るし、何より歌詞がめちゃくちゃよかった。このコロナ禍の中、鬱々とした暗いエンタメ界の希望になるような前向きなメッセージに、初見で心打たれてしまっていた。めちゃいい曲やんけ~!となるまで秒。

これが全米ビルボード一位の曲か~、さすがに納得の良さ!と思い、これは繰り返し見たいやつ!ということで、わたしは軽率に「Dynamite」をHDDに残すことを決める。

お気づきか?もうここからすでに沼への一歩が始まっているのである。

 

翌日はSexy Zoneの復活を噛み締め、それだけで胸いっぱいだったんだけど、翌月曜になっていよいよ、わたしはDynamiteのリピートから抜けられなくなっていた。

はじめはね、やっぱり顔の見分けがつかないわけですよ。どのグループも見慣れない時ってそうだと思うけど、わたしは特に今髪色が似てるのもあって、Vとジミンの見分けに最初ほんと苦労した……本当に同じ顔に見えてたんだよ……二人とも映像ではサングラス掛けてるし……まあ、それも二日目ぐらいには全員なんとなく見分けられるようになって、この頃にはYouTubeですでに動画を漁り始めていた。

でも、ここでオタク気づきます。もっといいコンテンツあるだろ、これ、と。韓国アイドル供給量がすごいときいてるぞ、こんなもんじゃないだろ?と、Yahoo!でいそいそと「BTS 新規」で検索。結果、Vliveにたどり着きます。

これがよくなかった。マジ、これは悪魔のコンテンツ。みんな、気をつけて(?)わたしは忠告しましたからね!

無料でこんなに動画見られていいんですか?! ねえ?! 気づけば時間がどんどん溶けていく。こわい。バラエティも番組もあるし、MVもあるし、MVの練習動画もある。およそオタクが見たいと思うものが一通り揃ってる。こんなことあっていいのか……?とジャニオタであるわたしは白目を剥いた。

もうこの時点で後戻りできない感がすごいわけ。沼も沼。ずぶずぶじゃねーか、と思いながら止まらない動画再生。

 

想像してみてください。韓国アイドルといえば、ちょっと近寄りがたさすらある、バキバキに揃った鬼気迫るダンスをする、わたしにはまるで軍隊みたいな集団に見えていました。あの圧倒的なパフォーマンスが真っ先に刺さる人は刺さるんでしょうが、わたしはあれが本当に怖いな、と思ってたんです。失敗したら殺されそうじゃん…完璧すぎて怖かった。人間じゃないみたいで、感情がないみたいで。

(思うに、わたしにとって過ぎたる美しさは、どうやら畏怖に繋がっているらしい。美しすぎて人間じゃないみたいで怖い、という感情は、時折コンサートで襲ってくるし)

でももう、動画を見れば見るほど、その想像と現実のギャップにやられるわけ。メンバー同士の仲の良さや、可愛さや、見た目のクールさに反した天然ぽさとかに、ひたすらかわいいむりかわいいむりかわいい……てなるわけ。甘いのとしょっぱいのを交互に食べると無限に食べられるやん?あれと同じ。可愛いバラエティ動画と、かっこいいパフォーマンス動画を交互に見ると、その高低差で耳がキーンてなる。そのぐらいギャップに一週間やられ続けた。

 

こうなってくると、自然と推しも決まってくる。というか、最初に見た動画がDynamiteのMVコメンタリーの映像で、その時ほぼほぼ心はジミンちゃんに決まっていた。

あのー、このコメンタリーの中で、末っ子ジョングク(ジャニオタ向けに説明すると、MUSICDAYのDynamiteの時に、イントロでセンターにいて最初にソロパート歌ってたあの子です)が自身のソロカットの撮影のことを話し始めた時に急に「この撮影の時、ヒョンたちのこと思い出しましたか?」て質問しだした人がいたんですよ。(ヒョンは韓国語でお兄さんの意。すぐ調べた)それがジミンちゃんだったんですけど。

この「ヒョンたちのこと思い出しましたか?」ていう質問の仕方を聞いた瞬間、

いやいやまって、かわいすぎる……!!!!!

と、わたしの中で可愛いメーターが振り切れてしまった。

だって、もうとっくに成人してる、あんなバキバキのダンスする人が、ヒョンたちのこと思い出しましたか?って、なにそれ、なにその訊き方可愛すぎるじゃん……しかもその質問に対して、「ヒョン…w」て半笑いでスルーするグクも相当かわいいし、スルーされてもしつこく訊き続けるジミンちゃんは輪をかけて可愛いし、なにこれ、なにこの可愛い生き物は…と、スマホを握りしめて震えてしまった。

それはわたしの中で、それまで韓国アイドルに抱いていた「完璧すぎて怖い」というイメージが完全に吹き飛んだ瞬間でもあった。

 

そうして、とりあえずメンバーの顔と名前が一致する状態で、いざ映画鑑賞へ。

映画の内容のネタバレを含むので、ここから先は畳みます。

 

 

 

 

まず、この三日の間に二回見てしまったのだが、一回目を見た後のわたしの様子がこちら。

 

イイ感じに狂ってるのがわかる。

 

さて、そんなこんなで二回見た、昨年のワールドツアー中のメンバーを追ったドキュメンタリー映画BREAK THE SILENCE:PERSONA」

正直、初っ端からめちゃくちゃ泣いてしまって、こんなに泣くとは思わなかった……と、自分にびっくりしてしまった。

ワールドツアーのメインタイトルは「LOVE YOURSELF」

映画の冒頭、RMさんは言う。「自分にも自分を愛せているか、愛し方がわからないと思ったから、一緒に探しに行こう、そういうツアーだった」と。なんかもう、ここですでに訳も分からず泣いてしまった。自分を愛するって、本当に難しいテーマだと思うから。だって、自分の至らなさって、自分が一番よくわかってしまうし、そういうダメな自分を誰より許せないのも自分だし、そういうダメな自分を、一体誰が愛してくれるんだろうってわたしなんかはよく思っちゃう。自分を愛するって、心の底からめちゃくちゃ難しいなと思ってしまう。

だから、なんだろ、同じだと思った気がする。この人も、もっと言うと、アイドルもやっぱり同じ人間で、同じ葛藤があって、不安があって、きつさがあって悲しみがあって、喜びがある。そういう当たり前かもしれないことを、また思い出して、その難しいテーマに、ステージの上の彼らが、一緒に寄り添って取り組んでくれるのって、ファンはめちゃくちゃ嬉しいよね、わかる、という涙だったんだろうと思う。

 

映画の構成は、ツアーの各都市ごとの公演映像に被せて、メンバー一人一人のインタビューが流れる、って感じだったんだけど、ああ、もう、ジミンが、ジミンの言葉が突き刺さってまためちゃくちゃ泣いてしまった。

「友達もいなくなって、僕を僕として見てくれる人もいなくなって、自由もなくなって、でも、最初はそれでもいいと思っていました。僕を変だと思う人がいてもかまわない。僕は一人でもやれる、そう思っていました」

もうなんか、ショックというか、なんて言っていいかわからない気持ちで、この言葉を聞きながらめちゃくちゃ泣いてしまった。ジミンが完璧主義で、努力の人で、誰よりもダンスを練習していて、そういうエピソードをかいつまんで知っていても、やっぱりその過去を、そういうふうに、彼自身の口から聞くのはしんどかった。

彼の、あの美しい体の運びの裏に、文字通り血が滲むような努力が刻まれている。あのしなやかに舞う体の内側に、わたしの想像なんて到底追いつかないような、たくさんの汗と涙が詰まっているのだ。そう思うと、愛おしくて堪らなかった。

それと同時に、ああ、この人を好きになるしかない運命だった、とも思った。認めざるを得なかった。好きにならないわけがなかった。生まれてしまった感情を、なかったことにはできない。

結局、そういう苛烈な努力で自分を追い込む人を、わたしはどうしようもなく好きになる。わたし自身が、努力する才能を持ち合わせていないから。努力を続けることが出来るって、とてつもない才能だと思うから。

「だから、ファンの人にも言いました。僕は人間パク・ジミンになりたくない(見せたくない、だったかも)プロとしての部分だけを見せたかった。でも、中間地点までくると、寂しくなった。そうなって、自分の周囲にいてくれる人のことが見えるようになった」

「友達を失くしたけれど、本当のいい友達に巡り合うことができたし、自由を失くしたけど、もっと別の自由な場所にいる」

「前に、BTSはなぜこんなに走り続けるのかと訊かれました。楽しいから、だと思います。何かを探して、生きている気持ちになれる」

 

楽しい、その言葉が聞けて本当によかったと思った。過去がどうあれ、今のジミンが健やかで楽しく生きていてくれれば、わたしはそれでいいよ。それ以外望まないよ。

 

映画の最後の方でRMさんが、アイドルがファンに贈る言葉として最高のやつを繰り出してきていて、それはコンサートの最終地ソウルの最終公演の挨拶のやつなんですけど、

「君は君を愛しているのか、と自分自身にきいてもまだよくわからないです。でもなぜか、愛せるような気持ちになれました」

「僕でいうと肌は浅黒いし、目もこんなだし、声もこんな感じだし、でも、皆さんのおかげで僕自身をもう少し愛せるようになりました」

 

ねえ、最高では????? だって、そうあってくれと、常に願っているんだから。わたしは、確かに自分に厳しい努力を課す人が好きだけれど、でも、それはつまり、まだこんなんじゃだめだ、というある種の否定感の裏返しでもあって、その度に、そのままの君で充分素敵だよと思ってしまう。でも、そう口にするのは簡単だけど、無責任で、なんだか違う気がして。

だから、いつも願う。

ただほんの少し、この声が、一緒に見た景色が、重ねた時間の中で舞うお互いの命の欠片が、きらきらと光る、その美しい一瞬一瞬が、どうか少しでも、前に進む力になりますようにと。

 

その結果、アイドル自身が、アイドルである自分を愛せるようになったのだとしたら、ファンとしてきっと、これ以上の喜びはないんじゃないかと思った。

そういう思いに至った時、BTSがこれだけ世界中で愛されるのもわかる、と納得してしまった。もちろん、作品やパフォーマンスがいい、というのはあるんだけど、やっぱり、真面目であったかい人たちの集まりなのは間違いなくて、そういうのは国を越えて人の心を打つのだと思い知らされる。

RMさんはこのツアーのことを、自分に翼をつけてくれた、という表現をしていた。その言葉を借りるなら、BTSはこれからもっと、高く、力強く、巧みに世界の空を飛ぶだろう。

 

 

 

揺れる、ペンライトの海の中。

この世で一番、美しい光が輝くのを見た。

躍動するその体から迸る、美しい光。

 

嗚呼、命が削れ、力強く弾けて煌めく、その音をもっと聞かせて。

 

 

 

 

 

 

 

 

最後に、これはめちゃくちゃ蛇足だけれど、わたしは物事の意味を考えたい人間なので、どうして自分がいま、このタイミングで、あれだけ避けていたK-POPに、しかも世界中を席巻しているBTSに、よりにもよって出会ってしまったのか、その理由を考えていて、よくよく考えたらセクゾと同じユニバーサルミュージックなんだよ、BTS

なので、これはいよいよセクゾが本格的に世界進出するっていうそういう兆しなの?と己の第六感に問いかけている……。

万が一、いや、億が一にでも、なにかがどうにかなって、交わったりしないかな?この2グループの世界線(完全に俺得の展開を希望)