結婚するならホソクみたいな人がいい

唐突な話だけれど、わたしには今、結婚する予定も、その願望もない。けれど、未来のどこかで万が一、いや、億が一にも結婚ということを考えるのであれば、その相手はホソクみたいな人がいいなと、最近思っている。

 

 

ホソクの活動名はJ-Hopeだ。希望を背負いこむなんて、なんつー重たい名前……というこちらの第一印象をよそに、彼は本当にグループの中で人一倍明るい振る舞いが目立つ。BTSというグループを観察するようになれば、そのことにはすぐ気づかされる。小さなことにも感嘆の声をあげ、年下のメンバーたちとも同じ目線でよく遊び、はしゃいであげることのできる懐の広いお兄さん。面倒見がよく、リーダーであり同い年でもあるナムジュンとは気の置けない関係でもある。

グループが円滑にまとまり、皆が気持ちよく過ごせるような雰囲気づくりという点において、彼の存在はめちゃくちゃでかいとわたしは思っている。

彼はとても優しい。誰もが明るく優しい彼を好きになる。けれど、その優しさはただ真綿のように柔らかなだけかというとそうではない。そして、そのことが何よりも大切だし、ホソクの魅力の一つだと思う。

 

 

優しさ、という言葉を考える時、わたしはいつもある言葉を思い出す。

2008年8月。嵐が二度目の24時間テレビメインパーソナリティに抜擢されたその年。番組の最後でニノがメンバーへの手紙を朗読した。

その中で、ニノは潤君のことを「温かい人」と表現していた。

 

潤君は一見クールで怖い感じに見られますが、非常に温かい人です。

優しい人はそこら中にいますが、あなたの優しさには温かさがあります。

その温かさについていこうと思えたんです。

 

 

ホソクの優しさにも、温かさがある。それは、血の通った温かさだ。見せかけではない、うわべだけではない、本当の温かな優しさだ。

時に、優しさは甘やかすことと見分けがつかなくなることもあるけれど、ホソクはそこを間違えない。そのことをわたしが痛切に感じたのが「BREAK THE SILENCE:DOCU-SERIES」Ep.2の一場面だ。

2019年開けてすぐのシンガポール公演。初めて訪れた蒸し暑い会場のコンディションにメンバーみんなが戸惑う中、それでもステージの幕は否応なく上がる。

慣れない会場、予想しなかった暑さ。そのせいか、思うようにパフォーマンスができなかったらしいジョングクが、公演終了後、ステージ裏で一人背中を丸めて悔し泣きをしていた。探しに来たジミンに慰められ、ジョングクはその後楽屋へと戻るけれど、そんな消沈しているジョングクに、ホソクはいつもの明るさを消して、真剣な顔で話し始める。

 

「ジョングク、僕が今、話してあげたいことがある」

「体力の調整も考えておかないと……ジョングクが舞台で本当に頑張る姿はすごくいいと思うよ。ファンのみんなもそれをみてわかるし、喜んでくれるから。でも、疲れないようにコントロールするのもプロとしての心構えだと、僕はそう思うよ」

「そこでもしジョングクが舞台に上がれずに、くたくたになったらどうなる?」

「真剣に、よく考えてみてほしい」

 

ジョングクは、ホソクのその言葉たちを、まだ少し濡れた瞳のまま、開きかけた唇を閉じることも忘れて聞いていた。

それはきっと、絶対に誰かが言ってあげなければいけないことで、でもちょっと伝えるのには勇気がいることだ。それを、この人が言うのだな、と思った。リーダーのナムジュンではなく、最年長のソクジンでもなく、普段あんなに明るく陽気に振舞うこの人がこれを言うのか、と正直ちょっと驚いた。

ああ、この人は甘やかさない人なのだな、と思った。厳しい、けれど愛情深い言葉たち。

相手のことを本当に想って、厳しくしなければならない時に、本当に真実厳しいことが言える人というのはそういない。

人は、優しさだけでは生きていけず、厳しさだけでは救われない。けれど、ホソクは強さの上に優しさを、優しさの中に厳しさを持っている稀有な人だとわたしは思う。

 

「In the SOOP」のEp.5でも、ホソクの優しさが光る場面がある。

一度ソウルに戻ったメンバーが、再び森へ帰る日。ホソクと同じ車になったテヒョンが、運転しながらぽつぽつと、制作途中のミックステープのことに関して悩みを口にする。

自分のやってきた音楽、自分の好きな音楽をファンの子たちに聴かせてあげたくて、ただそれだけで作っているけど、結局成果と結び付けて考えられるのではないか、と。自分はそんなこと全然気にしていないのに、と零すテヒョンにホソクは次のように言う。

 

「Vが初めて出すものだから、きっとみんな期待すると思う」

「でもこれが最後じゃないじゃん」

「僕はVがどんな感情を抱いていたって、全部がすごくいい方向だと思うよ。それが期待感であれ、結果に対するそういう色んな感情であれ。とにかく今、チャレンジしてるんだから」

「だからVがやりたいことをやって、期待はそのまま受け止めて、楽しんで。それでいいと思う」

 

大丈夫だよ、気にしないで。そんなふうに言ってあげることもできただろうし、わたしなんかはそんなふうに無責任に言ってしまうかもしれないこの場面でも、ホソクはやっぱり誤魔化さない。その上で、やりたいことをやって、色々あるだろうけど、それすらも楽しめとテヒョンの背中を押してあげている。

やってみたいけど、怖くてできない。そんなことは日々の中でも大なり小なりたくさんあって、そんな時に、この時のホソクみたいに言ってもらえたら嬉しいし、一歩踏み出す力になるだろうなと思う。

 

 

ホソクと一緒にいられたら、自分の人生の可能性がぐんぐん広がっていきそうだなと思えてわくわくする。無意識に尻込みしてしまうような場面でも、ホソクに「楽しんで」と言って、背中を押してもらいたいし、もしも間違ったことをしてしまったら、その時はそれをちゃんと叱ってもらいたい。

 

だからわたしは、結婚するなら、ホソクみたいな人がいい。