なにわ侍をみました【ジャニーズWEST結成2周年おめでとう】

君たちにこれから降り続く現実が、どうか、優しい世界でありますように。

 

 

「なにわ侍 ハローTOKYO!!」を見た。

まあまあふざけたタイトルのくせに、初っ端からメンタルをがっすがす抉られて、なんだかずっと、生きた心地がしなかった、というのが正直な今の感想だ。

両手で、今の、2016年の「7人でちゃんと笑っているジャニーズWEST」という現実を力いっぱい握りしめていても、最後まで心の片隅が冷えたまま、途中で何度も「むり、つらい、むり」となって、一時停止するという始末だった。

これはもうすでに起こってしまって、そして幕を下ろした過去の話の追体験に過ぎなくて、しかもフィクションで真実ですらない。なのに、すべてがフィクションではないのが分かるから、辛い。いろんな感情の波に飲まれて、全然冷静には見れなくて、かと言ってテンションがぶちあがるわけでもなく、逃げ出したいのに見届けたい、いや、見届けなくてはならない、というもはや謎の使命感すらあった。DVD一本見終わるのに、そんな笑えるくらいの決死の覚悟が、私には必要だった。

 

 

フィクションの皮を被った現実

2014年の2月5日。日生劇場でなにわ侍は幕を開け、同時に7人のジャニーズWESTが産声を上げた。

ジャニーズWESTがそのデビューに際して、4人という当初の発表から7人へ至るまでの経緯は、かのウィキペディア先生にも概要が載っているし、「ジャニーズWEST デビュー」とかで検索すれば、わかりやすくまとめられた記事もぽろぽろ出てくるので省略するとして、それら現実を下地にして創られたこの「なにわ侍」では、「なにわ侍」としてデビューする若者たちのオーディション風景から始まる。

カウコンの時のように、重岡、中間、桐山、小瀧の名が呼ばれ、重岡の親友である神山はこのオーディションで落ちてしまう。

 

神山「よかったやんけ、シゲ。がんばれよ」

重岡「なんかの間違いや!お前も絶対入ってる!」

神山「名前呼ばれへんかったやろ? そういうことや」

重岡「神山、そんなら俺がお願いしてやる。神山も入れてくれって」

神山「…もういいから」

重岡「……は?」

神山「俺の努力が、足らんかっただけやろ」

 

私「……むり!!!!!! こんなんつらすぎて!!!! 涙で前が見えませんけど!!!! かみちゃん!!!!!」

 

これは現実じゃないけど、でも現実にあったのだ。これと同じようなことが、現実に。

そう思ったら、とてもじゃないけど無理だった。血の気が引く音がした。この舞台に掛けられたフィクションの薄い膜は簡単に破れ去り、綺麗に包み隠されたはずの現実が生々しく私に突き付けられている気がした。

7人でデビュー出来るかもと言われて、やっぱりデビューは4人でと覆されて。それでも大阪に戻れば、否応なしに7人顔を合わせて、一緒に舞台に立たなくちゃならなくて。そりゃ、淳太くんじゃなくても「地獄だった」って言いたくもなる。ていうか地獄だろ。地獄以外の何物でもないだろ。

そういうことをどうしても考えながら見てしまうからもうね、一場だけでHP7割くらい削られた(九場まであるのに)

 

ツインの話と重岡君と重岡君の話

劇中で私の心をがんがん揺さぶってきたのが、三場~五場にかけてだった。

デビューしたものの、コンサートでうまく足並みが揃わず、そのせいで喧嘩別れっぽくなってしまう「なにわ侍」

 

小瀧君はソロでやっている流星君をグループに誘いに行く。

星は一人では輝けない。仲間がいるから輝ける。互いを輝かせ合えるお前らが羨ましいと本音を零す流星君。そんな流星君に小瀧君は叫ぶ。

 

「僕らが一緒になれば! もっと輝ける」

「望みを叶えるには、流れ星が必要なんや!」

後世に語り継ぎたい名言だろ、これ。

 

 

ツインの描く物語は美しい。

その一言に尽きると本当に思う。顔やスタイルがいい。ただそれだけじゃない。

かっこいいとかわいい。

静と動。黒と白。陰と陽。

長男である流星君と、末っ子の小瀧君。

クールかと思えば天然の超イケメン、甘えたがりだけど物怖じしないビッグベイビー。

外からグループを客観視でき、しっかりとした自分という芯を持っていて、ちょっとやそっとじゃ流されたりしない流星君と、中にいてメンバーを好き勝手に弄り倒し、全部を自分のペースに巻き込んで、結局なんだかんだ許される、愛され気質の小瀧君。

ツインタワーとはよく言ったもので、似てるところなんて、本当に身長くらい、他はほとんど全部真逆なんじゃ?と思うのに、考え方やこうしたい、こう見せたいという気持ちがしっかり重なるツインの放つ輝きは、だからいつも強烈に眩しくて美しい。混じりあわない色。でも、重なり合う。響きあいながら高め合い、倍化する旋律。光が影を描くように。影に光を見出すように。絶対的に違う個性を放つひとつとひとつでありながら、二つで一つの完璧な世界がそこにはある。

望みを叶えるには流れ星が必要だけれど、流れ星にだって、叶えるべき望みが必要だったのだと思う。そう思い込まされてる気もするけれど、それでいいやって思える。

おかげさまでVIVIDを生で見るまでは絶対死ねない人生になりました。

 

 

大阪にて、神山君を探しに行った重岡君。

工事現場でバイトをしている神山君を見つけ、もう一度一緒にやろうと声を掛ける。

 

神山「俺はな、お前の夢を応援したいんや」

重岡「俺だけの夢ちゃうやろ。俺ら二人の夢や」

  「神山、お前はグループに、絶対必要な人間や」

 

神山「もう自信ないねんて…!今まで自分に出来ることは何でもやってきたよ、死に物狂いでやってきたよ!! それでも通用せんかったんやぞ?!……俺は、どんだけ努力しても報われへん人間なんやろな」

 

重岡「神山、お前諦めてへんのやろ? 夢掴みたいんやろ?! じゃあ最後まで!根性だして!立ち向かってみろ!…これは、俺ら二人で叶える夢や」

 

 

ちょっと、自分でも頭おかしいかなっていうことを書く。

この五場のかみしげのやりとり。

最初こそ、神山君の身を斬られるような真実の、おそらく本音だったであろう魂の叫びに、むり、つらい、むり、となってたわけだけど、何度も見ているうちに、これは7人を諦めた重岡君(劇中の神山君)と7人を諦めきれない重岡君(劇中の重岡君)という、カウコンから日生初日までの重岡君の心の葛藤をみせられているのではないか、と思うようになった(だいぶメンタルをやられてると自分でも思う)

そう思い始めたら、三場の事務所のシーンも、諦めた重岡君と諦めきれない重岡君のやりとりに見えてきた。

 

三場ではうまくいかなかったコンサートのことで、桐山君と重岡君を中心に、メンバーがばらばらになる様が描かれている。

 

桐山「俺らの世界は一回一回が勝負や!真剣にやれ!」

重岡「勝負って言ってもな、俺ら、アクロバットとか楽器とか、出来るわけじゃないやんか。まだまだ力足りひんのとちゃうかな」

小瀧「ライブ出てみて思っててんけどさ、僕らって、なんか足りひん気がすんねんな。いやそれは…っ、シゲがいうてたアクロバットとか楽器なんかもしらんし、もしかしたらっ……もしかしたら、この四人じゃ、なかったのかもね」

桐山「今さら、何言うてんねん……この四人て決められてんから、この四人でやるしかないやろ?! てっぺんとるんやろ?!」

重岡「てっぺんなんか、こんな状況じゃとられへんよ」

 

もう全部重岡君の心の声に聞こえてくる病!!!

 

桐山「俺だって、わかってるよ。分かってるけど、この四人て決められてしまってんから、この四人でやるしかないやん…!」

  「やっと掴んだチャンスなんや、もう逃したくない」

(めっちゃ余談だけど、ここで照史君が歌う一歩という曲、ジャニワ初年度で山田君が歌い知念君が踊った「Where My heart Belongs」という曲に、とてもよく似てる気がする。こう、歌詞の言ってることの大枠や伝えたいことは、だいたい同じなのかなと思う。全然曲調違うけど)

 

自分の妄想が飛躍しすぎてるのは百も承知で書くけど、こう、重岡君って7人でのデビューを一番諦めてなかった印象がすごくある。写真集で照史君も重岡君は「7人がいい。情けとか同情とかじゃなくて、オレは売れたい。売れるためにはこの7人が必要や」ってきっぱり言ったと証言している。でもそんな重岡君だって、一旦は4人というのを受け入れて、でも7って想いを捨てきれなかったと、一万字インタビューでは述べている。

その、受け入れて、でも捨てきれなくて、だけどデビューを逃したりは出来なくて、そのためには腹を括らなくちゃいけなくて、でも…っていうこの思考の無限ループ!!

それをここでこうして舞台という形で赤裸々に再現されてる気がした。私の勝手な妄想で独りよがりな解釈だけども。重岡君の7人にかける思い、ジャニーズWEST7人のデビューにかける思いが渦巻く三場~五場は本当にメンタル抉られ続けるし、そのせいもあって八場の桐濵の掛け合いは死ぬほど笑えて救われる。

そう、濵ちゃんの存在は救いだ。彼の存在がグループを一つに繋ぐ。なんてまあ、器の大きい人なんだろうと、知れば知るほど思う。

 

 

 

ジャニーズは、いろんなグループがあるけれど、こうしてデビューに関するあれこれを、舞台という形とはいえ、記録に残してもらえたのはとても貴重だしありがたいことだと思う。でも、デビューに関する苦労のことを、語りたがらない重岡君の気持ちが、これを見ながら少しだけ分かる気がした。

辛すぎる。なんだかもう、その一言に尽きるのだ、結局。

私は今こうして映像を見てるだけだから、自分の意志で進めたり止めたり出来る。

でもこの舞台を初日に見た人達の気持ちになると、もう、なんだか、もう、むり…!!!てなるしさ。

有り得たかもしれない未来がリアルに辛すぎる。実際に一度はデビューという希望を粉々にされた神ちゃん、流星くん、濵ちゃんの絶望が胸に突き刺さる。誰かが何かを一瞬でも諦めていたら、今日のジャニーズWESTはなかった。そうなった可能性は十分にあって、もうこれ以上ないってくらい、本人たちもファンも現実の残酷さに振り回されて、今が幸せだからじゃあ全部綺麗な過去になりました、なんて、私はこれっぽっちも思えなかった。思えないから辛い。辛い思いをしただろうっていうのが分かるから。デビューって何なんだ。華々しさの裏で、世界が別の顔で嗤っていたことを、私は何も知らなかった。何も分かっていなかった。あんなこともあったね、あの時は大変だったねと語るには、まだ過ぎた時間が圧倒的に足りないと思った。まだこんなにも生々しい。もしかしたら私はいつまでも、このDVDを見ながら何度でも、デビューの鮮烈な喜びの輝きとともに、一度は潰えそうになった、いや、確実に一度は踏みにじられた夢の断末魔を聴くのかもしれないとすら思う。その度に泣くだろう。その度に現実の厳しさと、何をどうすることも出来なかった自分の無力さを呪うのかもしれない。

そして、今ある現実の幸せを、何度だって噛み締めて確かめる。

 

先日のコンサート終わり、改めて思った。私は、アイドルの笑顔が大好きだって。

彼らが心から笑えているかどうか、それを確かめるために私は、アイドルに会いに行ってるのかもしれない。心から笑って欲しいから、アイドルで良かったと思って欲しいから、アイドルである自分に誇りをもって欲しいから、大好きだよって、叫んでるのかもしれない。

 

DVDの最後、重岡君は言います。

 

ジャニーズWEST、これからも7人で、力を合わせて、全力で突っ走っていきます。これからたくさん、つまづいたり、転んだり、することあると思います。泥まみれになるかと思いますけど、皆さんの前を、これからも歩き続けて、走り続けたいと思いますんで、これからも僕たちに、ついてきてください」

 

重岡君の中では、つまづくことも、転ぶことも、泥まみれになることも決定事項なんだなと思いました。夢を売ることを生業とする世界で、何よりも現実を見据えて、甘えることなく、驕ることなく、夢を夢で終わらせないためにがむしゃらに、走り続けるのがアイドルなんだと、この重岡君の言葉に教えられた気がします。そして、てっぺんのその先に私たちを連れて行くこともまた、重岡君の中ではもう決定事項なんだろうなと思います。こうなったらいい、という希望的観測ではなく、こうなる、という決意表明。それが、君たちをもっともっと強くするし、私の不安や迷いを打ち消してくれる、そんな気がしています。

もう、悲しい雨にはたくさん打たれた君たちだから、どうか、明日からも続いていく世界が、ジャニーズWEST7人にとって、優しいものでありますように。

いつか、てっぺんから見た景色に架かるであろう虹を見て、一緒に笑いあえますように。

 

ジャニーズWESTのみなさん。結成二周年、本当におめでとうございます。